口蓋裂・口唇裂

摂食と構音の改善に

形成外科

口蓋裂

口蓋は前方3分の2の骨のある部分を「硬口蓋」、後方3分の1の軟らかい部分を「軟口蓋」といいます。 妊娠7~14週にかけて口蓋が癒合する過程に何らかの障害が生じることで、様々な状態の口蓋裂が生じます。 この疾患は口唇裂と密接な関係があり、口唇裂・口蓋裂の患者の半分は両方を合併し、残りの半分は口唇裂だけ、口蓋裂だけの患者がそれぞれ半分ずつを占めます。 口蓋裂では鼻腔と口腔を分ける境がないため、食べたものが鼻から出たり、言葉が鼻から漏れて相手が聞き取りにくいなどの問題が生じます。 成長に伴って歯並びが乱れることも口蓋裂(顎裂)の問題のひとつで、それらを解決する目的で手術治療がなされます。 口蓋の癒合障害の程度に応じて様々な程度の披裂が口蓋に生じますが、その程度は両側完全唇顎口蓋裂から、粘膜下筋層のみに裂を認める粘膜下口蓋裂まで様々な形態があります。 口蓋裂の手術は口蓋形成術といわれ、正常な言語を獲得することに一番重点が置かれます。 言語機能の獲得を第一として歯列や咬合、顎顔面発育に関連する機能の修復が目的ですが、歯並びや顔面形態も改善できるよう様々な工夫がされて治療は行われます。

口蓋裂の形成手術

口蓋裂手術では口蓋をより後方に移動することを目的としたプッシュバック法と呼ばれる手術が行われてきました。 口蓋を後方移動することで鼻腔を閉鎖する機能(鼻咽喉閉鎖機能)を、より確実にすることを目的とした方法です。 しかしこの方法では口蓋前方に粘膜欠損を生じ、その後の顎発育を障害する原因となることが指摘されてきました。 最近では口蓋の後方移動を行わなくても、軟口蓋の筋肉を確実に再建することで良好な鼻咽喉閉鎖機能が得られるとの認識も広がり、顎発育に影響の少ない様々な口蓋閉鎖法が検討されています。 正常な軟口蓋は口蓋垂の前方で左右からの筋肉が合わさって筋肉の輪を形成していますが、口蓋裂では筋肉が硬口蓋の後方に付着してしまい本来の機能を発揮することができません。 そこで手術によってこの筋肉を正常化させます。口蓋裂の患者は中耳と鼻腔を連絡する耳管の機能異常、耳管開口部の汚染などにより中耳炎にかかりやすいとされています。 そのため術前より耳鼻咽喉科による中耳疾患の検索が行われ、滲出性中耳炎が遷延する場合には口蓋裂手術の際に中耳炎の治療も行います。

口唇裂

口唇裂とは上口唇(うわくちびる)の皮膚に割れ目が生じたもので、左右どちらか一方に割れ目があるものを片側唇裂と呼び、両側に割れ目があるものを両側唇裂といいます。 また割れ目の程度にも、口唇の皮膚に部分的に軽いスジがある痕跡唇裂、口唇は割れているものの一部で連続が保たれている不完全唇裂、完全に口唇が割れている完全唇裂まで様々です。 口唇口蓋裂のお子さんは約500人に1人の割合で生まれるといわれ、様々な要因が複雑にからみあって発現すると考えられており、特に特定の原因があるわけではありません。 口唇裂の子供は口唇が割れていると同時に鼻も変形しています。口唇の割れが軽度でも鼻の変形は高度な場合が多く、手術は割れた口唇と鼻に対して行います。 多くの場合小学校高学年ぐらいで歯茎の割れに対して骨移植が必要になり、口の中も割れている場合(口蓋裂)は1歳前後で手術が必要になります。 成長するにつれて顔のバランスが変わってくる場合もありますので、必要に応じて小さい修正の手術が行われることもあります。 このように口唇口蓋裂治療では長期的な専門治療が必要になります。